出張先で美味しいものに出会ったとき、食べさせたいな、喜ぶかな、と思って送ったことは何度かある。親の家を整理していたら、私が旅先から送った絵葉書がたくさん出てきた。だからまあ、気にかけていなかったわけではないし、それを言い訳にしていた節もあるのだけれど、「母の日」を祝った記憶がほとんどない。
誰かが決めたお約束の匂いが、する。一年に一度、カーネーションでせーので感謝するって、どうなの? と乗れなかった。自分の生活に追われて余裕がなかった。親から文句を言われたことはない。母は娘のあまのじゃくに慣れていただろうし、娘の味方だ。義母はお約束が好きな人だったけれど、気を使って言えなかったのだと思う。その結果、今、とても後悔している。めんどうくさいことを言わずお祝を届ければ喜んでくれたろうに。そう気付いたとき、親はすでにいない。格言の通りだった。
したくてもかなわない「母の日」の贈りもの。それを今回は疑似体験させていただければ、と思う。自分が欲しいものを重ね合わせて選んだけれど、今の私はあの頃の母たちと同じ年齢だ。中高年のお母様がいらっしゃる方の参考にしていただければと願う。
「リネンのパジャマ」。写真のオフホワイトのほかベージュも。サイズはM・L。着続けることで風合いが増し、馴染んでくるのもリネンの嬉しいところ。各19,440円
まず実家の母には、「リネンのパジャマ」をプレゼントしたい。寝るときはパジャマに着替えるのが当たり前の時代の人だったから、冬はネル、夏はサッカー、とそれぞれの季節に合う生地を選び、普通の服と同じように衣替えもしていた。だからこのパジャマは喜んでくれたと思うのだ。歴史あるフランスの産地で収穫された“顔の見える”リネンを使っているので、とにかく滑らかでなおかつさらりとした肌触り。吸湿性もよく、スタンダートで締め付けないシルエットに仕上がっている。寝心地も夢見も良かったに違いない。
パジャマを選んだのにはもう一つ私自身の理由もある。すっかりスウェット派だったのだが、最近それがつまらなく感じられるようになったのだ。会社勤めをしていた頃に比べおしゃれをする機会が減った、その反動だろうか。誰かに見せるわけではないけれど、好きなパジャマでその分を埋め合わたいと思っているのかな、とも思う。パジャマに着替えることがオンオフのスイッチを入れ、快眠に結びつくというデータがあると聞けばなおさらだ。
「アッカカッパ」は1869年創業のイタリアの老舗ブランド。手前のブラシはベーシックな「ニューマティックブリストル」4,968円/奥はループ状の毛先が頭皮にやさしい「プロテクション」5,184円/お手入れに便利な「ブラシクリーナー」 1,944円/髪にもハンドケアにもおすすめの「わかさ椿油 ローズ」30ml 4,320円
義母には「アッカカッパのヘアブラシ」はどうだろう。これは自分で使っていて、そのよさを実感している日用品だ。ブラッシングすると頭皮が喜んでいるのがわかるのだ。 文 田中真理子 ▼商品ページはこちらから▼
義母の髪が急にペタンコになったのは、ちょうど今の私と同じぐらいの年齢の時だったと記憶している。「おぐしが少なくなってせつないよぉ(長野弁)」と言われて戸惑ってしまい「そんなことないですよぉ」と返したものの適当なあしらいだったと思う。でも今はわかります、これだったんですね、おかあさん。髪が減る、パサパサする、コシがないのにクセは強くなってきた。こんなことで悩まされるなんて私、想像していませんでした。
「アッカカッパのヘアブラシ」は美容師さんに「頭皮が硬くなってますからマッサージしてくださいね」と勧められたのがきっかけだった。最初はヘアブラシでそんなに違うのかと半信半疑だったけれど、とにかく気持ちがいい。コシのある猪の毛と特別なナイロンでできたブラシ部分、グリップの握り心地、サイズ感、天然ゴムのクッション。すべてのパーツが重なり合っていい仕事をしているというか、使い始めてすぐに毎日のシュッシュッシュッが習慣になったほどだ。
そんなわけで遅くなってしまったけれど、言わせてください「おかあさん、これでいっしょに毎日ブラッシングしましょう」と。驚くほどすーっと伸びる「椿油」も添えて贈れば、ガールズトークも盛り上がったかもしれない。
パジャマやブラシのような日用品は、いいと知っていてもなかなか自分のためにお金を出すには至らないような気がするのだがどうだろう。そしてだからこそちょっといいものが「母の日」には喜んでもらえるような気がする。おしゃれの要素がさりげなく効いているのもポイントが高いんじゃないか、と。