お祝い上手になる

2018.06.1 金

お祝い上手

第5話 記憶も詰めていく/結婚祝い - 暮しの手帖の通販会社 グリーンショップ BLOG

しい後輩が結婚することになり、お祝いに重箱を贈らせてもらうことにした。今どきではないかもしれないと迷ったが、今どきのところや今だからというところもあるように思えて、でも届ける前に「重箱をあげたいんだけどどう?」とたずねたら、「欲しい」と言ってくれたので届けた。
贈り物の基本は、私自身が欲しいものだと思っている。相手の気持ちや事情はもちろん大事だけれど、自分ひとりさえそう思えないものが他の人を喜ばせることを想像できない。
重箱は、今の彼女と同じぐらいの年齢の時、私が欲しくてずいぶん探したものだった。

 

二段重ねの『竹の重箱』は京都の老舗、公長齋小菅のオリジナル。サイズは2種類。6.5寸角(縦横19.5㎝)¥14,040と5寸角(縦横15㎝)¥12,852

どもの頃の重箱の思い出は一色ではない。運動会の昼ごはんどきに出てくると「ださっ」と思った記憶がある。運動が苦手だったのでその日の私は何にでも当たり散らしていたのだろう。お正月やお花見の日は両親が料理を詰めているその様子をそばでずっと見ていても、いったん閉じた蓋を開けるときはとてもわくわくした。うちの重箱は朱色と黒の大きな市松模様で、蓋と側面の柄が交互になるようにちゃんと重ねられると得意になった。蓋の裏には贈り主の夫婦の名前が金色で書かれていた。あれはあの頃の習慣だったのだろうか。近所のおばちゃんがぼたもちを入れて持ってきてくれる大きな黒い重箱は鶴が羽を広げた蒔絵が怖くて、それだけであの家の子でなくてよかったぐらいに思っていた。味付けも母と違っていた。
重箱には食べ物だけでなく、様々な記憶が詰まっている。ちょっと特別な日の家族のふるまいや家の匂いも知らず知らずに詰まっている、詰めて重ねていける。今の後輩と同じ30代の半ば、幼い子どもとの暮らしが始まった頃の私が欲しいと思ったのには、そんな背景があったように思う。
近所のおばちゃんは今も健在で、帰省するとぼたもちを作ってくれるけれど、洗って返す必要のないプラスチック容器に入れ、数だって食べきれる量、甘さも控えめになった。それはそれでいいけれど、重箱の行き来が懐かしい。昨年の朝の連続テレビ小説『ひよっこ』で脚本家の岡田惠和さんが重箱に大事な役割を担わせたのも、同じような思い出があったからなのかな、と想像する。そして時を超え、外出するときには水筒持参、リサイクル意識の高いこれからの人たちなら重箱を引き継いでくれるかな、とかすかに期待する。

竹の素材感を生かしたシンプルで清潔感のあるデザイン。6.5寸角、5寸角とも組立て式十字の仕切り板がひとつ付いている。

は、重箱はとても使い勝手がいいものだ。同じ料理でも重箱に入るとぐっとしまって見えてくる。ぎゅっと詰めても、余白があってもさまになる。煮しめでも和菓子でも盛り付けがしやすい。軽量で割れる心配がなく、モバイルには好都合。単独での出番はもちろんだが、陶磁器との相性が良く食卓に並べるとき組み合わせが楽だ。
グリーンショップで扱っている『竹の重箱』は漆塗りに比べて軽やかな印象に仕上がっていて、若い人の暮らしやテーブルにすっとなじむと思う。取り扱いもしやすく、組み立て式の仕切りも便利。深すぎず浅すぎないのでとても詰めやすいなど、初めて持つお重として重宝すると思う。お正月やお祝い事の時には、ぐるりと水引を結んでみてはどうだろう。お赤飯なら、ごま塩をぽち袋に入れて添えれば華やかになりそうだ。いろいろ工夫する余白があるのは悪くない。

文 田中真理子


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