ゆず畑に放った蜂が集めたゆずはちみつをかけて食べる。そんな収穫時期だけの楽しみ方をしつつも、それだけではいけません。ゆず畑700本のゆずは2015年,2016年と大豊作。ゆずは豊作の「表年」、不作の「裏年」がほぼ隔年でやってきます。現在の収穫量は、「表年」で約10トン、「裏年」で一番少ないときは約2トンと大変不安定です。ところがなぜか取材時は予想に反して2年続けて「表年」。予想外の豊作に平均80歳の農家さん6戸は大忙し。晴れた日を狙って一斉に収穫作業が行われます。
私もお手伝いはしましたが、とても追いつかない量を短期間で収穫しなければなりません。人手が足りず取り残してせっかくの貴重な資源を無駄にすることもあるとのこと。このときようやく国造ゆずが抱える問題点に直面。楽しんでいるだけではなく、これまで守られてきた農薬を使わない栽培を維持しつつ、国造ゆずやその周辺の環境、文化、人の魅力といった価値発信や、農作業を支える仕組みづくりが必要だと実感しました。もちろん何もしてこなかったわけではなく、むしろ様々な取り組みがされていました。次回以降、地元で行なっている面白い取り組みもご紹介していきたいと思います。
ところでゆずを収穫をしたかどうかは、畑に行かなくても農家の皆さんの顔をみるとわかります。ゆずは棘(とげ)が鋭く、収穫作業になれている農家さんでも棘で顔に引っかき傷があちらこちらに。農家さんが苦戦する国造ゆずのこの棘は、バラのような短い棘ではなく、長く尖った槍や刀といった武器のように鋭いのです。地面に落ちた枝を誤って踏むと固い靴底でも簡単に貫くほど。
収穫期に私と同じく森の中にある「ゆず団地」の話を聞いて見学にきた国造地区の唯一の小学校で学ぶ当時4年生が書いた研究発表ポスターからもその鋭さが伝わります。この日、収穫を終えて防寒着は刃物で切り裂かれたように破け、額には赤い引っかき傷の顔で子どもたちに棘の説明をする農家さん、説得力ありすぎです。この真剣勝負が子どもたちにも伝わったようで、棘に関してはどの図鑑よりも詳しくわかりやすいこのポスターがそれを物語っていました。
能美市国造地区ゆたかなくらし協議会
コーディネーター 森 進太郎
(さんのきファクトリー・代表)